Collaboration Project Yasuhiro Watanabe & Kaie Murakami

Collaboration Project
Yasuhiro Watanabe & Kaie Murakami

渡辺康裕とムラカミカイエ。
今、二人が本当に着たい服とは?

Interview & Text Hiroshi Kagiyama
Photos Shuhei Kojima

スタイリストの渡辺康裕さんと、クリエイティブディレクターのムラカミカイエさん。ファッションシーンの最前線に居続けながら、同時代を生きる気心の知れた二人にとって、コロナ以前とは一変した今の生活で本当に着たい、欲しい服とは一体どんなものなのか? コラボレーションにまつわる話とともに、二人が今考える想いと新たな可能性に迫ります。

まず、今回MINEDENIMとのコラボレーションをお二人が取り組むことになったのは、どんないきさつだったんですか?

ムラカミナベさん(注:渡辺康裕さん)が、前回のコラボレーションでデニムを作ったことから始まったんですよね。

渡辺去年、MINEDENIMで別注のデニムを作らせてもらったんだけど、実のところ、自分が履く定番のデニムを、今後の自分のワードローブのストックとしても作ってもらいたかった、というのが本音としてあって(笑)。周りの同世代の人たちって、自分たちが着たい服を自ら作ってしまうことを90年代後半から始めていて、今思うと意外と早かったんですよね。それに対して、当時の自分は好みのシルエットとか、色でいうとネイビーとか、好きな分野がだいぶ限定されていたので、あえていろいろなブランドが解釈するデニムとかネイビーを着てみたかったんですよ。でも、今はこの歳になって、やっと自分の好きなものが固まってきたので、自分にとってのエッセンシャルというか、自分の定番を作って、それを(買い手の人たちに)少し共有できたらいいな、という思いが芽生えていて。そこで、「定番デニム2本をMINEDENIMとコラボレーションさせてもらえませんか?」という話をさせてもらって、前回の企画が実現したんです。その話を、(ムラカミ)カイエくんと撮影現場で一緒になった時に雑談していたら、「好きな方向性とか似ているし、一緒に作ろうか」という話から、今回は二人で作らせてもらう流れになって。何気なく話していた流れでそうなったんだよね?

ムラカミそうですね。そもそも、ファッション業界の人って、普段から意外と派手なものを着てないですよね。むしろ地味というか。

撮影現場に行く職業の人たちは、写真や映像に色が被ったり写り込まないように、地味な色味で現場に臨むことが暗黙のエチケットでもありますしね。

ムラカミだから、二人とも着ているものがどんどんベーシックになっています。ただ、ファッション畑出身でもあるから、素材とか細かいところにはうるさい(笑)。襟回りがもっとこうとか、身幅がもっとこうだったらいいのに、とか、みんなが気にしないようなところが気になってしまうから。「だったら、自分たちで作ったほうがよくないですか?」みたいな話が、そもそものきっかけでした。僕もネイビーか黒しか着ないし、同じネイビーでも浅いネイビーは絶対着ないとか、ナベさんとの好きな共通点も多いから。

ネイビーが好きな人って、ネイビーの服を着続けていくと、ある時から濃い色味のネイビーしか好きじゃなくなる感覚は理解できます(笑)。では、デニムのお話をお二人にお聞きしたいんですが、そもそも最初に買ったデニムはどんなものだったか覚えていますか?。

渡辺初めて自分の意志で買ったのは12歳の時。ビッグジョンのリジットだった(笑)。

ムラカミその時からリジットが始まっているじゃないですか(笑)。

渡辺そう言われれば(笑)。そのあとに買ったのがリーバイスの501だったんだけど、自分の地元が山口県で、お膝元でもあるユニクロのお店があって、当時はリーバイスの501とかショットのライダーズとか、オリジナルウエア以外のものが少しだけ置いてあったんだよね。そこで501を買ったんだけど、それもリジットだった(笑)。

ムラカミ(笑)。僕が最初に買ったのはリーバイスの505のブラックデニムでした。地元の先輩が505にVANSを合わせて履いていたんだけど、「これが一番かっこいいんだよ」って言ったことに感化されて。そう考えると、初めからブラックデニムだったなぁ。

お二人とも、その頃から好きなものがブレてないっていうことですね?(笑)

渡辺そうですね(笑)。大人になってからはリジットデニムを水通ししないで履くようになったけど、中学生とか高校生の頃は、デニムを買ってから一回水通しして、みたいな教科書どおりの扱い方だった(笑)。

ムラカミリジットのままで履き続けるのって、もう少しあとに定着したカルチャーですよね。

渡辺そうだったね。自分の十代後半ぐらいに、アルマーニジーンズとかフレンチジーンズみたいなのが流行ったんだよね。その流れでデザイナーっぽいデニムも履いたり、その後に古着屋の「シカゴ」で穴が空いたジーパンが安いから買う、みたいなのが流行ったり、ブーツカットが流行ったり。でも、自分はずっとリジットだった。501は、靴とのバランスが野暮ったくなるというか、合わせるのがすごく難しいなって十代の頃から思っていたんだけど、その後に1ロールアップとか、インチアップして履く、とかになってから、やっとしっくりくるようになった。

ムラカミ僕は十代の頃、ロンドンのストリートファッションが好きだったんだけど、体もガリガリだったけど、細身のデニムがなかなか売ってなかったから、仕方なくウィメンズの25インチとか26インチを履かざるをえなかったときもありましたね。その後、90年代半ばぐらいからは、A.P.C.のデニムに、シュプリームの服をいかにミニマルなストリートっぽさとして合わせるか、みたいな感じでしたね。だから、それが大人になってきて、質がよくなるぐらいで、基本構造はあまり変わってないかな。

渡辺なるほどね。自分はデニムの話でいうと、スタイリストになりたての頃、90年代後半ぐらいからロンドンに年に2〜3回行くようになったことが一番大きかったなぁ。当時、日本人の知り合いがロンドンにたくさん住んでいたんだけど、その人たちがイギリスのジェンツのスタイルなのに、あえてリーバイスの36インチとか、アメリカンな太いデニムを腰履きしたりするのを楽しんでいて、それがかっこよく見えたんですよ。そんな彼らのスタイルとかカルチャーからも影響を受けつつ、自分は撮影現場の裏方の仕事だから、ずっとデニムでいいかなぁ、みたいな気持ちになった。だから、2000年以降はリジットのデニム以外は履いたことがないかもしれない。

当時ロンドンにいた日本人クリエイターの数多くが、今は東京を拠点に活躍されていますし、その人たちから影響を受けた背景があったんですね。対して、ムラカミさんはどうですか?

ムラカミ僕はもう90パーセント、ブラックデニムですね。しかも、ほぼスリムかスキニー。ブラックデニムだけで30本ぐらいあると思う。同じもののインチ違いもあるし、色が落ちてくると、また同じものを買う。最近でこそ、シュプリームのテーパードのブラックデニムとかはたまに履くけど。

渡辺やっぱりブラックなんだね(笑)。それってリーバイスでいうと、シルバータグっぽい感じのもの?

ムラカミそうですね。今ではブーツに細身のブラックデニムが、もはや制服みたいになっています。下半身だけ見ると、(野口)強さんと一緒、みたいな(笑)。

(笑)。では、今回のコラボレーションの話について、お二人の好きなブラックとネイビーの2色展開なんですよね?

「SOLOTEXを使っているこの生地は軽くてシワも付きづらいし、原料で色が染まっているので、色落ちしにくいんです」(ムラカミ)

ムラカミそうなんです。僕も黒に近いネイビーは好きなので、ナベさんと濃紺の色出しの話にもなったんですが、春夏ものだしブラックのほうは真っ黒すぎるとちょっと嫌かなぁと思っていたら、今回使うソロテックスの生地にちょうど墨黒が存在したんですよ。そもそも、ナベさんも僕も、普段の仕事のひとつに撮影があって、ロケ場所によっては汚れる環境で着なきゃいけないんですよ。一方で、真面目なミーティングにも出なきゃならない。とはいえ、コロナになってスーツ着る人が少ないし、二人とも元々スーツを着ないから、カジュアルだけど襟付きのちゃんとしものがあるといいな、というところからコーチジャケットがいいね、みたいな話になって。オンでもオフでも着られて、ちゃんと見えるカジュアルなセットアップがほしいな、と。

そういう経緯から生まれたんですね。ボトムスはロングパンツでなく、なぜショーツだったんですか?

渡辺&ムラカミ……春夏だから(笑)。

(笑)。

「袖を動かしやすいように、腕を立体裁断にして少し前振りに傾斜をつけています」(ムラカミ)

ムラカミロングパンツもサンプルを作ってみたんだけど、素材的にショーツのほうがしっくりきたので、そうしました。今回の生地を探すうえで、とにかくネイビーの色出しにこだわる、ということから、MINEDENIMさんには生地をかなり探してもらったんですよね。

渡辺コーチジャケットって、スーベニアとかグッズの感覚にある手軽さが魅力でもあるけど、自分としては、ナイロンじゃなくて、素材のいいきれいなコーチジャケットがないかなと思っていたところだったから。

まとめると、今回お二人が作ったコーチジャケットは、コロナ渦の生活で働くなかで、自分たちの職業や仕事の内容にも適応できる大人のジャケットということですね。

「裾の紐も少し大人っぽくしたくて、蝋引きの平紐で少し品のある感じにしました」(ムラカミ)

ムラカミそうですね。しかも、この生地は、ペットボトルの再生ポリエステルでできているんです。自分もいろんな企業と仕事しているなかで、環境問題とか在庫不良も課題だと思っているので、素材の上質さにはこだわりたいけど、環境性にもこだわりたいから、できることはやっておきたいというのが前提としてあります。とはいえ、単に説教臭いエコ服を作りたいわけでもなくて。二人とも、これまでにいい服もそれなりに着てきて、いろいろと見渡してきたなかで、自分たちが日々出なきゃならない場所があるけど、今はコロナもあってオンとオフの境界線がなくなってきているじゃないですか。その状況に、これ一着あれば事足りて、なおかつ上質で環境性能のある服を作りたかったのが、とにかく一番にありました。あとは、二人とも車に乗るから、丈の短いジャケットで着回しのいいものが欲しかった。

渡辺コートを着る姿は好きなんだけど、ほぼ毎日車に乗るから、裾を気にするのが少し煩わしいよね。

コーチジャケットって、たとえば若い頃にかっこいい先輩のスケーターがみたいな人が身近にいたり、当時の雑誌やメディアに出ているヒーロー的なアイコンも着ていたので、コーチジャケット=かっこいい人とカルチャーに密接にある、という憧れみたいなものが強いから、服としても魅力的なんですかね?

渡辺そうかもしれない。それってデニムも同じ存在だよね?

ムラカミ世代的にも、それは絶対あると思います。でも、センスのある若い世代の人たちは、古着のデニムのミックスの仕方が上手ですよね。

渡辺おじさんには、もうなかなかできなくなってきたけど(笑)。

「今は行けないけど、二人とも海外出張も多いので、パスポートとかを出し入れやすいように内ポケットを両側に付けてもらいました」(渡辺)

ムラカミ(笑)。今回作らせてもらった服みたいに、アメリカンカルチャーの背景のあるものを品良く仕上げた服は、僕たちよりも年上の社会的な立場にある大人から、それこそ若い人たちも似合うだろうし、そういう汎用性の高いものにはしたかった。サンプルづくりのときに、ナベさんとは「これ似合わない人いなくない?」って話してましたよね?

「ポケットのステッチとかを省いて、要素をなるべく削ぎ落としました。あと意識したのは、羽織った時に気持ちいいぐらいのサイズ感かな」(渡辺)

渡辺誰でもユニフォーム的にパサッと着られる、カバーオールとかジージャンの進化系みたいなね。

ムラカミあとは、ナベさんは太いパンツばかりで、僕は細いパンツしか履かないけど、コーチジャケットってそのどちらにも合うし、しかもショーツにも合うから、ある意味で万能だと思うんですよ。出張は、このセットアップさえあれば事足りるかもしれない。

あとは個々にいつものパンツが1本あれば、旅でもどこでも行けるということですね。

渡辺ショーツだと銀座のクラブには入れないしね〜(笑)。

一同(笑)。

Profile

渡辺康裕

1972年生まれ。スタイリスト歴23年のベテラン。数多くのアーティストやファッションショー、広告などで活躍。年2回のメンズのパリコレクションも欠かさず足を運ぶ、日本人スタイリストでは数少ない常連のひとり。
http://wtokyo.co.jp/artists/yasuhiro_watanabe/

身長 176cm 着用サイズ3

ムラカミカイエ

1974年生まれ。ブランディングエージェンシー「SIMONE INC.」代表。国内外多数の企業のブランディング、コンサルティングを手掛ける。最近はキャンプ好きが嵩じて、アウトドアプロダクトブランドwanderoutも始動。
https://simone.jp

身長 171cm 着用サイズ2

  • PE DUG Denim Coach JKT DNY

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  • PE DUG Denim Coach JKT BLK

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  • PE DUG Denim Easy Shorts DNY

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  • PE DUG Denim Easy Shorts BLK

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